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リサーチ・技術解説公開 2026-06-14更新 2026-06-15

Web3資金調達ウィークリー(6/8-6/14)|Digital Assetが$355M、Morphoが$175M、EthenaにJanus Henderson出資

伝統的な金融機関の資本が、今週はオンチェーンの信用・決済インフラへ直接流れ込みました。象徴は二つの大型ラウンドです。機関投資家向けパブリックL1ブロックチェーンCantonを開発するDigital Assetがa16z crypto主導で$355Mを、DeFiレンディングのMorphoがParadigm・a16z crypto・Ribbit Capital共同主導で$175Mを調達し、いずれも評価額は約$2Bに達しました。これに加えて、運用資産約$480BのJanus Hendersonが、合成ドルUSDeを手がけるEthenaへ戦略出資し、自社の資金運用と商品にステーブルコインを組み込む提携を結んでいます。

$355Mが入ったDigital Asset、資本市場のオンチェーン決済基盤Canton

トークン化された債券と資金をオンチェーンで同時決済する機関向け決済基盤を業務フローとして示した図

今週いちばん大きな資金が向かったのは、消費者向けのアプリではなく、機関投資家が資本市場の取引を処理するためのオンチェーン基盤でした。その象徴がDigital Assetの$355M調達です。同社は2014年創業の金融インフラ企業で、銀行や取引所向けに、債券・ローン・ファンドといった現実資産(RWA)をトークン化し、共有台帳上で発行・取引するためのパブリックL1ブロックチェーンCantonを開発しています。a16z cryptoが主導し(報道では単独で$100Mを拠出)、Abu Dhabi Investment Authority、Apollo、BNP Paribas、HSBC、Citadel Securities、S&P Global、SBI Groupなど20を超える機関が参加しました。ラウンド後の評価額は約$2Bです。

特徴は、投資家がトークンではなくエクイティ(株式)を取得した点です。Cantonは各取引を関係する当事者だけが見られる「ニード・トゥ・ノウ」設計を採り、機関が前提とする取引相手やポジションの秘匿を保ちます。すでに600を超える機関が参加し、累計で$6兆相当のトークン化資産を扱ってきたとされ、JPMorganの預金トークンやDTCCが保管する米国債のトークン化も同基盤上で進んでいます。$355Mはこのエコシステムの拡充と提携・買収を含むネットワーク成長に充てられ、Digital Assetは本ラウンドを経て黒字化したと説明しています。

銀行と資産運用会社が、オンチェーンの信用市場でトークンを直接買った

貸し手・借り手と銀行・フィンテックをオンチェーンの共有レンディングインフラがつなぐ信用ネットワークの図

オンチェーンの信用市場にも、同じ規模の資金が入りました。DeFiレンディングのMorphoは、Paradigm・a16z crypto・Ribbit Capital共同主導で$175Mを調達しています。Morphoは、銀行・フィンテック・資産運用会社がオンチェーンで信用プロダクトを構築するための共有レンディングインフラで、総預入額は$11Bに達します。ラウンドにはApollo Funds、VanEck、SBI Group、フランス政府系のBpifranceなど20社超が参加しました。

Cantonがエクイティだったのに対し、こちらは伝統的金融機関がガバナンストークンMORPHOを直接購入する構造です。調達はMorpho Associationがトークンを月次平均市場価格で売却する形で実施され、株式を発行する従来型の調達とは性質が異なります。評価額は最大$2Bと報じられています。大規模オルタナティブ運用のApollo Fundsは今回の参加に先立ちMorphoとの協力協定をすでに結んでおり、トークン購入はその延長にあります。

合成ドルの裏付け資産にAAA格付けクレジット、運用大手が組み込む

合成ドルの裏付け資産にトークン化されたCLO ETFが組み込まれ、トレジャリーと規制対応商品へ広がる構図の図

資産運用の大手が、ステーブルコインを投資先としてだけでなく、自社の資金運用と商品の一部として扱いはじめました。その最も明確な例が、運用資産約$480BのJanus HendersonとEthenaの提携です。Ethenaが発行する合成ドルUSDeは、暗号資産のロングと先物のショートを組み合わせてドルとの連動を保つステーブルコインで、価格変動の影響を中立に保つデルタ・ニュートラル運用から利回りも生みます。

提携は四つの柱からなります。Janus HendersonはガバナンストークンENAへ戦略出資し(金額非公開)、自社トレジャリーの運用に利回り付きのsUSDeを採用します。これに加えて、同社のAAA格付けCLO ETF「JAAA」をトークン化してUSDeの裏付け資産に組み入れ、USDeとENAを対象とする規制対応のETF・ETPの共同開発も進めます。これまでデリバティブ中心だったUSDeの準備資産に、機関投資家向けの上位格付けクレジットが加わる形です。

同じ週、伝統的な金融商品をそのままオンチェーンに載せる動きも続きました。仕組み型金融商品をブロックチェーン上で発行する「Chain Traded Products」のTVL Capitalが、Framework Ventures主導のSeedで$5Mを調達しています。Morgan StanleyやUBS出身の経営陣が率い、ETPの取引を中核とするマーケットメイカーのFlow Tradersも出資しました。想定元本ベースで$2.5兆規模とされる仕組み型金融商品市場を、スマートコントラクトに置き換えてオンチェーンへ移すことを掲げています。

機関参入を支える規制ライセンスとプライバシー基盤

規制ライセンスの取得とゼロ知識プライバシー層が機関投資家のオンチェーン参入の前提条件として並ぶ入口管理の図

機関がオンチェーンで動くための前提――規制ライセンスとプライバシー――をそろえる動きも、同じ週に複数走りました。暗号資産マーケットメイカーのGSRは、米国の証券会社(ブローカーディーラー)Equilibrium Capital Servicesを買収し、GSR Securitiesとして再編しました(買収額非公開)。FINRA(米金融取引業規制機構)の承認を得たことで、SEC登録・FINRA加盟という規制ライセンスを取得し、トークン化商品の発行支援や機関投資家向けの証券業務をコンプライアンス基盤の上で提供できる体制を整えます。

規制登録を前提に資金を集める例も出ています。予測市場・スポーツベッティング向けの決済インフラを手がけるEDGE Marketsは、CoinFund主導のSeries Aで$29.2Mを調達し、全米先物協会(NFA)への先物仲介業者・先物委託業者の登録申請を進めています。登録が承認されれば、ユーザーは自分のEDGEアカウントから直接予測市場で取引できるようになります。

もう一つの前提がプライバシーです。SolanaのRPC・開発インフラ大手Heliusは、ゼロ知識圧縮(ZK Compression)とプライバシー基盤を手がけるLight Protocolを買収しました(買収額非公開)。Heliusはプライバシーを、機関投資家がパブリックチェーンを採用するための前提と位置づけ、ZKのプライバシーツールを自社のRPC・インデックス基盤へ直接統合する方針です。先に触れたCantonの秘匿設計と合わせ、取引内容を関係者だけに限る仕組みが、機関の参入条件として共通して求められています。

今週の資金が一様に伝統金融へ向かったわけではありません。AIエージェント向け決済インフラのAI Pay with Crypto(APC)は、Animoca Brands主導で$10Mを調達しました。自律エージェント自身が決済する「エージェントエコノミー」を掲げており、伝統金融とは別の方向に資金が向いた一例です。ただしGSRの証券業務もEDGEの予測市場決済も、稼働には引き続き規制当局の登録・承認が前提で、EDGEのEDGE ProとEDGE Connectは2026年を通じて早期採用者へ無償提供される段階にとどまります。

今週の参照ページ

資本市場・決済基盤:

ステーブルコイン・商品:

規制・プライバシー・その他:

あわせて確認したいページ

FAQで確認したい論点

比較検討や社内説明で出やすい疑問を、一次説明に戻れる形で確認できます。

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