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リサーチ・技術解説公開 2026-07-19更新 2026-07-22

【暗号資産業界週次振り返りと考察】7/13-7/19|決済3社が同時調達、買収は週5件に

2026年7月13日から19日の週は、方向の異なる4つの動きが並びました。この週の7月18日は、米国のステーブルコイン規制法GENIUS Actの成立からちょうど1年にあたります。決済インフラの3社が、この週に同時に調達しました。給与前払い向けのPact Labsが$7M、企業向けトレジャリーのVelocityが$38M、決済サービスプロバイダー向けのCyclopsが$20Mです。

並行して、暗号資産インフラの買収が5件重なりました。ロールアップ構築のSovereign Labsは、データアベイラビリティのCelestia Labsに買収されました。決済・トレーディングの各層でも、単機能インフラの買収が続いています。

この週最大の調達はAlpacaでした。Peak XV Partners主導のエクイティ$135Mに融資枠を加え、総額$435Mの資金調達パッケージを組成しています。

大手マネーがオンチェーンインフラを検証する動きも、同じ週に見えました。マルチチェーン清算基盤のGlacis Labsには資産運用大手のFranklin Templetonが参加し、予測市場のPascalでは米ベンチャーキャピタルのUnion Square Venturesが調達を主導しています。

GENIUS Act一周年の週、ステーブルコイン決済インフラに調達が集中

GENIUS Act成立1周年(2026年7月18日)と同じ週に、決済インフラ3社がそれぞれ別の投資家が主導するラウンドで調達しました。連邦の最終規則自体はまだ確定していません。

CoinDeskの報道によれば、FDIC・OCC・財務省がそれぞれ規則案の公表やコメント募集を並行して進めている段階で、業界団体Crypto Council for Innovationは「各規制当局・金融機関・イノベーターは、より明確になった土台の上で構築を進めている」とコメントしています。

同じ報道によれば、ステーブルコインの流通総額は約$310B(USDT約$184B、USDC約$73B)に達し、2025年年初から5割超増えました。

Pact Labsが$7M、うち$2.5MはTether自身の出資

Pact Labsは、Aptos上ですでに$1.9B超のトークナイズドプライベートクレジットを組成してきたPACTエコシステムを土台に、TetherのドルステーブルコインUSA₮を米国の給与・給与前払いの現場で使えるようにするインフラ企業です。

Payactiv・Tokuとの連携で給与前払いの実運用もすでに始まっています。$7MのSeries AをTetherが主導し、Blockchange VenturesとLasagnaも参加しました。

Pact Labs公式Xの説明によれば、このうち$2.5MはTetherによる戦略的エクイティ出資です。

TetherのCEOであるPaolo Ardoino氏は、新興国の労働者が自国の決済網の不備をUSDTで穴埋めしてきたという経緯を挙げ、賃金支払いの遅さにドル建て決済の需要が積み上がってきたと説明しています。USA₮自体は対応チェーンが2本にとどまり、USDCの15本・USDTの20本超と比べるとまだ発展途上の段階です。

Velocityが$38M、Dragonfly・FirstMark共同主導でアフリカ・中南米展開へ

Velocityは、企業がステーブルコインで資金を保有・送金・決済できるようにするロンドン拠点のプラットフォームです。Dragonfly CapitalとFirstMarkが共同で主導するSeries Aで$38Mを調達しました。Dragonflyにとっては、Fortuneが報じた2026年2月の$650M規模Fund IV組成後の投資の一つにあたります。

2025年のPre-seedと合わせた累計調達額は$50M弱に達し、資金はアフリカ・中南米展開に必要なライセンス取得と、カストディ基盤への投資に充てる計画です。Velocityの創業者はFortune誌の取材で既存の銀行インフラを「ひどい」と評し、競合を暗号資産企業ではなく銀行・FX会社に置いていると説明しています。

この週の調達を後押しした主因はGENIUS Actによる規制の明確化ですが、コルレス銀行網(複数の仲介機関を経由する従来型の国際送金網)の構造的な非効率という需要側の要因も、この調達を支える副次的な土台になっています。

Cyclopsが$20M、PYMNTSはVelocityとの直接競合と位置づけ

Cyclopsは、決済サービスプロバイダーや加盟店契約会社がステーブルコイン決済を扱えるようにするインフラで、The Giving Block創業者らが立ち上げました。Nava Ventures主導のSeries Aで$20Mを調達し、Coinbase VenturesとCircleも参加しています。

決済業界専門メディアPYMNTSは、この調達を同じ週のVelocityの$38M調達と並べ、両社を直接の競合として位置づけました。GENIUS ActとMiCA(欧州の暗号資産規制)が「決済会社がステーブルコインのブームを収益化するために必要な法的な明確さを生んだ」と評しています。

決済インフラ3社の調達を比較する図。Pact Labsは$7M(Tether主導、給与前払い向け)、Velocityは$38M(Dragonfly Capital・FirstMark主導、企業向けトレジャリー)、Cyclopsは$20M(Nava Ventures主導、決済サービスプロバイダー向け)で、いずれも同じ週にステーブルコイン決済インフラへ調達した。

単機能インフラの買収が5件

業界の集計では、2026年上半期の暗号資産M&Aは$93.7B規模、前年同期の約26倍に達しており、この週の5件の買収もこの増加ペースの中で起きています。Q1が$21.4B、Q2が$72.3Bという内訳で、既存プレイヤーが単機能のインフラを自社開発せず買収でそろえる動きが目立ちます。

Celestia LabsがSovereign Labsを買収、CEO自ら「単体では振るわなかった」と認める

Celestia LabsのCEOであるNick White氏は自身のX投稿で、データアベイラビリティ(取引データを検証可能な形で公開・保管する仕組み)の単体提供という従来路線に触れました。その採用は「lackluster(振るわなかった)」だったと認めています。顧客が実際に求めているのは、データを安く預かるサービスではなく、設計から構築・デプロイまで完了した専用チェーン一式だという理由です。

この買収で、アプリ特化型ロールアップSDKを手がけるSovereign Labsの共同創業者Preston Evans氏はCelestia LabsのCTOに就任しました。両チームを合わせてこれまでに25以上のブロックチェーンを本番稼働させてきたと、Celestia Labsは説明しています。

FalconXが非公開IPO準備と並走してbloXrouteを買収

低遅延ネットワークインフラのbloXrouteは、機関投資家向けブローカレッジのFalconXに買収されました。FalconXは2026年5月ごろ、SECへ非公開でS-1(株式を新規公開する際にSECへ提出する登録届出書)の下書きを提出したと報じられています。

今回の買収に先立ち、オプション取引特化のArbelos Marketsと運用資産約$11Bの21Sharesの買収、資産運用会社Monarqの過半数株式の取得を進めており、bloXrouteは一連の買収の4件目にあたります。取引高に左右される執行手数料収入から、資産運用残高に連動する経常収益源へと収益構造を広げる狙いがあるとみられます。

MoonPayが半年で6件目の買収、Glideを取り込む

クリプト入金インフラのGlideは、決済企業MoonPayの2026年6件目の買収先になりました。鍵管理のSodot、クロスチェーンルーティングのDecent、Solana上の取引実行基盤DFlow、AI会計のEntendre、AI取引エージェントのDawn Labsに続く買収です。

MoonPayのCEOであるIvan Soto-Wright氏は「資金を動かし、守り、取引し、記帳する」機能を1つのプラットフォームに統合する狙いだと説明しています。

この週にはほかにも、Hyperliquid周辺のバリデータ・データインフラを手がけるImperatorがトレーディング端末のHyperdashに、マルチチェーンDeFiのMasterDEXが規制対応取引所のLCXに、それぞれ買収されました。いずれも対象は取引まわりの単機能インフラで、買い手の既存サービスに組み込まれる形です。

同じ週に起きた5件の買収関係を示す図。Sovereign Labs(ロールアップ構築SDK)はCelestia Labs(データアベイラビリティ)に、bloXroute(低遅延ネットワーク)はFalconX(機関投資家向けブローカレッジ)に、Glide(クリプト入金インフラ)はMoonPay(決済企業)に、Imperator(Hyperliquid周辺インフラ)はHyperdash(トレーディング端末)に、MasterDEX(マルチチェーンDeFi)はLCX(規制対応取引所)に、それぞれ買収された。2026年上半期の暗号資産M&Aは$93.7B規模で前年同期の約26倍という背景の中の5件。

買収主体のHyperdash自身も2025年11月にpvp.tradeに買収され「執行とデータを組み合わせたフルスタックのソリューション」として再設計された経緯があり、今回のImperator買収はその垂直統合パターンをさらに外側へ広げた動きと位置づけられます。

ImperatorはHyperdashの下でHypeRPC・Hype Globalとともに一つの傘下に統合され、単体のバリデータ・データインフラではなくHyperliquid周辺機能をまとめて提供する体制を狙ったとみられます。MasterDEXはLCXの米国向け新規事業ライン「LCX Liberty」の一部に組み込まれ、LCXは米国事業を、買収で得たチェーン横断DeFi機能で立ち上げる形です。

Alpacaの$435M、狙うは規制済みの参入障壁

“agent-first”はAlpacaが今回の調達に掲げたラベルであり、実際の参入障壁は数年かけて築いた規制対応済みの清算・カストディ基盤です。Alpacaは、Peak XV Partners主導のエクイティ$135Mと、Kraken運営会社PaywardおよびBMOからの融資枠最大$300Mを合わせ、総額$435Mの資金調達パッケージを組成しました。

米国トークン化株式の約94%を清算・カストディ、OndoもxStocksも顧客

米国のトークン化株式のうち約94%の清算・カストディを担っているとAlpacaは説明しており、Ledger Insightsも今回の調達より前からこの寡占ぶりを報じています。トークン化株式の主要プレイヤーであるOndo Global MarketsもxStocksも、実は競合ではなくAlpacaの顧客です。

X上の実務者@chaincast_は「多くのAPIブローカレッジは薄いラッパーに過ぎず、規制対応の実質を欠く」という趣旨の懐疑を示していました。

しかしAlpacaは、規制対象の自己清算型ブローカーディーラーとして数年かけて清算・カストディ体制を築いてきた企業であり、この懐疑がそのまま当てはまるかは、少なくともAlpaca自身の説明からは疑わしいといえます。

Alpaca自身の説明によれば、月間アクティブAPIユーザー数は直近半年でおよそ4倍に増え、その多くがAIエージェントの接続によるものだとしています。

AIエージェント決済は年間$73M超、決済プロトコルは競合段階

AIエージェントによる決済そのものは、業界全体でもまだ小さな規模にとどまっています。CoinDeskが伝えたKeyrock社の調査によれば、2025年5月から2026年4月の1年間でAIエージェントが決済した総額は$73M超(約1億7,600万件の取引)で、その98.6%がCircle発行のUSDCで決済されており、単一発行体への集中リスクも指摘されています。

同じ報道は、Coinbaseのx402、StripeのMachine Payments Protocol、Visaのトークン化クレデンシャル、GoogleのAP2など、複数の決済プロトコルが競合している段階だと伝えています。

大手マネーの検証、RWAと予測市場に

大手マネーがオンチェーンインフラに参加する動きは、この週、清算基盤と予測市場のそれぞれで起きました。運用資産1.5兆ドル超のFranklin TempletonはGlacis Labsのシードラウンドに参加し、Union Square Venturesは予測市場取引所PascalのSeries Aを主導しました。

業界の集計では、トークン化されたRWA(現実資産)市場は2026年5月時点で$34.5Bに達し、前年同月比で2倍に成長しています。

Franklin TempletonがGlacis Labsに参加、$6.8Mのラウンド

マルチチェーンの資産清算プラットフォームZeroDeltaを手がけるGlacis Labsは、Lightspeed Faction主導のSeedラウンドで$6.8Mを調達しました。ZeroDeltaは複数のチェーンをまたぐ資金移動をネッティング(相殺)し、実際にオンチェーンで動かすのは差額だけに抑える仕組みです。

CEOのBlish氏は、前職Lidoで経験した複数チェーンにまたがるブリッジの分断・リスク管理の課題を、この設計の出発点として説明しています。

Franklin Templetonの参加には、自社が展開するトークン化マネー・マーケット・ファンド「BENJI」を支える決済レールを早期に押さえる狙いがあるとみられます。

Pascalが$9M、CFTCは規則案のコメント募集中

予測市場取引所のPascalは、Union Square Ventures主導のSeries Aで$9Mを調達しました。USVは公式Xアカウントで、予測市場が「この24か月、一貫して期待を上回る成長を続けており、まだ早い段階にある」という投資判断を説明しています。Fred Wilson氏個人の関与には、Pascal自身も返信投稿で触れています。

同じ週、CFTCは予測市場(イベント契約)の適法性を審査する規則案のコメント募集期間中で、期限は7月27日でした。Kalshiは2026年5月時点の評価額$22Bからさらに拡大し$40Bを目指す交渉に入っており、Polymarketも$15B評価額での調達を目指しています。

Pascalはこの先行2社がリテール寄りの体験に軸足を置くなかで生まれた隙間を狙い、低い手数料とプロトレーダー・機関投資家向けの高度なツール、パーペチュアル先物型(満期がなく期限を気にせず持ち続けられる先物型)の執行方式で差別化を図っています。一方でX上では、寡占が進む予測市場への新規参入が流動性の分散を招くとの懸念も見られました。

ここから先に見ておきたい点

5件の買収が続いた執行インフラの垂直統合は、この週の動きのなかで、この先の展開が最も読みにくい領域です。

FalconXの非公開S-1提出が、このあと公開ベースの正式なIPO申請に切り替わるかどうかが、最初の分かれ目です。切り替わらずIPO自体が延期・撤回されれば、FalconXの一連の買収を「IPOに向けた事業基盤の拡張」とみるFX News Groupの読み方は前提を失います。

FalconXが2026年内に正式なS-1を公開申請するかどうか、MoonPayが7件目以降の買収を発表するかどうか、Celestia LabsがSovereign SDK統合後の実行レイヤー製品をいつ発表するか、そしてCFTCの予測市場規則案が7月27日のコメント締め切り後にどう固まるかが、この先の判断材料です。

決済インフラ側では、GENIUS Actの連邦最終規則がいつ確定するかが、Pact Labs・Velocity・Cyclopsのような調達がこのペースで続くかどうかを左右するとみられます。

参照ページ

決済インフラの調達:

買収による統合:

Alpacaの大型調達:

RWA・予測市場への大手マネー参入:

あわせて確認したいページ

FAQで確認したい論点

比較検討や社内説明で出やすい疑問を、一次説明に戻れる形で確認できます。

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