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リサーチ・技術解説公開 2026-08-16更新 2026-08-17

【暗号資産業界週次振り返りと考察】8/10-8/16|eToro、暗号資産収益3割減の同じ日に米国株ブローカーを最大$231Mで買収

暗号資産の売買手数料で伸びてきた取引プラットフォームが、2026年8月10日から16日の週は、暗号資産以外の取引事業を買う側に回りました。eToroは8月11日、第2四半期の暗号資産関連の収益が前年の$1.91Bから$1.35Bへ縮んだと発表しています。同社はこの日、米国の株式・オプションブローカーTradeZeroを最大$231Mで買うと公表しました。

将来の出来事の結果を売買する予測市場でも、複数の取引所をまたいで注文と証拠金を1本にまとめる執行基盤に資金が入りました。River MarketsがHaun Ventures主導で$8.5Mを調達しています。取引所の側でも、Kalshiが少なくとも$750M・$40B評価での調達を協議中と報じられました。

ただし、暗号資産収益の減少と今回の買収を結びつける読み方には、反論も出ています。CoinDeskは8月11日、eToroとTradeZeroのどちらも、買収後の暗号資産やトークン化の計画を開示していないと書きました。当面は、米国でのブローカー事業と販路の拡大にとどまります。

一方、トークン発行で資金を集めるための制度づくりは、2つとも前に進みませんでした。SEC(米証券取引委員会)は8月14日に予定していた初の規則制定の採決を前日に取り下げました。CLARITY法(米国の暗号資産市場構造法案)の上院本会議採決も、9月半ばへ持ち越されています。

暗号資産の取引収益は主要プラットフォームで軒並み減り、eToroは米国株ブローカーを買収

暗号資産の取引で稼ぐ収益が主要プラットフォームで縮むなか、規制済みの株式・オプション取引を買収で取り込む動きが出てきました。eToroは8月11日、第2四半期決算とTradeZero買収を同時に公表しています。

第2四半期の暗号資産収益は$1.91Bから$1.35Bへ、7月の取引件数は73%減

eToroの第2四半期は、暗号資産関連の収益が前年の$1.91Bから$1.35Bへ、およそ3割減りました。暗号資産部門は前年同期の$37.7Mの利益から$7.2Mの損失に転じています。7月の暗号資産の取引件数は前年同月比で73%減でした。

一方、株式や商品を扱う資本市場部門の純貢献は、前年比25%増の$142Mまで伸びています。取引全体の純貢献は9%増の$229M、GAAP(米国会計基準)ベースの純利益は77%増の$53Mでした。The Blockによれば、暗号資産が取引の純利益に占める割合は、第1四半期の時点ですでに5%まで下がっていました。

eToro第2四半期の比較図。暗号資産部門は収益が$1.91Bから$1.35Bへ、利益は$37.7Mの黒字から$7.2Mの損失に転落し、7月の取引件数は前年同月比73%減。一方、資本市場部門の純貢献は前年比25%増の$142Mに伸び、取引全体の純貢献は9%増の$229M、GAAPベース純利益は77%増の$53M。

免許と顧客基盤ごと取り込む最大$231M、クロージングは2027年上半期

同じ8月11日に公表されたのが、TradeZeroの買収です。対価は現金とeToroの新株(最大250万株)で構成され、クロージングは規制当局の承認を条件に2027年上半期を見込みます。TradeZeroの直近12か月の売上はおよそ$80M、粗利率は81%と説明されています。

買収先が持っているのは、手数料無料の株式・オプション取引と、空売りに必要な借株を確保するツールです。証券会社としてのブローカーディーラー基盤も自社で保有しています。

The Currency Analyticsは、eToroが米国株式でより強い基盤を築こうとしていると分析しています。TradeZeroにはすでに、アクティブトレーダーの顧客基盤があります。同じものを自前で作るより、免許と人員がすでに揃った会社を買うほうが速いとも指摘しています。

減ったのはeToroだけではない、主要プラットフォーム横並びの縮小

収益源が入れ替わったという見方もあります。The Defiantは「暗号資産収益が縮むなかでの買収」と見出しに掲げ、株式取引がその分を担っていると書きました。ただしCoinDeskは8月11日、この読み方を退けています。買収後のTradeZeroで暗号資産やトークン化に踏み込む計画は示されておらず、いまのところ米国での販路を広げる取引にとどまります。

暗号資産収益の減少はeToroだけの現象ではなく、第2四半期は主要な取引プラットフォームで軒並み起きています。Finance Magnatesの決算まとめによれば、暗号資産の時価総額は四半期比12.6%減、中央集権型取引所の現物出来高は27.9%減でした。eToroのCEO、Yoni Assia氏自身も、この減速を4回目の暗号資産サイクルだと表現しています。

発表当日、eToroの株価は下げました。下落幅は計測の窓によって9%から18%まで報道が分かれており、新株発行による希薄化と、Robinhoodが強い米国株式市場での競争が理由に挙がっています。

この買収で暗号資産事業の縮小を補えるかどうかは、まだ分かりません。判断材料になるのは今後の四半期決算です。2027年上半期のクロージングまでに、$11Mまで落ちた暗号資産部門の純貢献が戻るかどうかが分かります。

$8.5Mが入ったのは予測市場の取引所ではなく、取引所をまたぐ執行レイヤー

この週話題になったのはKalshiへの巨額評価でしたが、実際に資金を調達したのは、複数の取引所をまたいで注文をさばく執行の層でした。

Kalshi・Polymarketをひとつの口座にまとめる執行基盤に、Haun Ventures主導で$8.5M

予測市場(ある出来事が起きるかどうかを売買し、価格がそのまま確率の目安になる市場)には、この週2つの方向から資金を呼び込みました。取引所そのものと、取引所をまたぐ執行の層です。

執行の層に入ったのが、Haun Ventures主導のSeedラウンド$8.5Mでした。調達したRiver Marketsが集約するのは、Kalshi・Polymarket・Polymarket USという別々の取引所の口座・API・証拠金管理です。これらを1つのアカウントと1本のAPIにまとめます。

River Marketsの執行レイヤーを示す図。機関投資家がRiver Marketsの1つのアカウント・1本のAPIを通じて、別々の口座・API・証拠金管理を持つKalshi・Polymarket・Polymarket USの3取引所にまとめてアクセスする構造。River MarketsはHaun Ventures主導のSeedラウンドで$8.5Mを調達。

ラウンドにはY CombinatorやCoinbase Venturesのほか、Citadel・JPMorgan・NVIDIA出身の個人投資家も参加しました。ラウンド自体は2026年7月に成立し、発表が8月11日でした。

機関投資家向けに売買・証拠金・資金管理をまとめて提供するプライムブローカーの役割を、予測市場向けに作った形です。アイスバーグ注文(大口注文を小分けに見せて出す方式)や逆指値、戦略ごとに資金を分けるサブアカウントを備えています。

共同創業者は、元BlackRockのクオンツと、元Morgan Stanleyで高頻度取引ファームに在籍した2人です。自分たちの予測市場取引のために作った仕組みを、そのまま製品にしたと語っています。

満期ごとに流動性がゼロから積み上がるという、予測市場に固有の分断

取引所ではなく執行の層に資金が入った理由を、リード投資家のHaun Venturesは自社の論考でこう説明しています。予測市場のイベント契約はオプションと違い、満期を迎えるたびに流動性がゼロから積み上がるため、分断が恒常的に残ります。

予測市場にも、オプション市場の分断をかつて解消したのと同種の執行レイヤーが必要になっています。需要の側からの説明もあります。CoinDeskの論考によれば、これまで見立てをきれいに表現する手段がありませんでした。中央銀行が金利を据え置くか、軍事行動が起きるか、通商政策が変わるかといった問いが、その例です。

需要が実際の収益として現れている例は、すでにあります。Robinhoodの第2四半期の予測市場収益は$156Mで、同社の暗号資産取引収益$100M(前年比38%減)を上回りました。ただしFinance Magnatesは、この事業に留保をつけています。複数の取引所をまたぐプロの取引量が、専用の執行・プライムブローカー層を支えるだけの規模になるかどうかにかかっていると指摘しています。

Kalshiは$40B評価で協議中、CFTCは緊急権限で全米営業を維持

取引所の側では、8月13日に少なくとも$750M・$40B評価での調達協議が報じられました。相手はSequoiaとWellington Managementで、3か月前の$22B評価からほぼ倍の水準です。CoinDeskによれば、Kalshiの年換算収益は7月時点で約$4Bに達しています。ただし出来高の8割超は、いまもスポーツ契約が占めます。

この協議は成立していません。数字も条件も動きうる段階のものです。

執行の層が乗る土台の側には、法的な不確実性が残っています。CFTC(米商品先物取引委員会)は8月11日、緊急権限を行使しました。ニューヨーク州が$36Bの請求を掲げて訴えるなか、Kalshiの全米営業を維持するよう命じたものです。ただしこれは訴訟が続くあいだの現状維持であって、ニューヨーク・イリノイ・アリゾナ・コネチカットなど複数の州との管轄争いの決着ではありません。

機関投資家向けの貸借基盤では、使う側だったパートナーが1週間で2社続けて出資者に回った

機関投資家向けの貸借基盤Tokenetを運営するDigital Prime Technologiesに、この週は利用パートナーからの出資が相次ぎました。8月だけで2社が、使う側から出資者へと立場を変えています。

LTPの戦略出資は、Marex発表からわずか1週間後

機関投資家向けのデジタル資産レンディング(貸し借り)では、基盤を使う側と出資する側の境目が薄くなっています。Digital Prime Technologiesは8月12日、プライムブローカーのLTPから戦略的投資を受けたと発表しました。LTPは香港・オーストラリア・UAE・英領バージン諸島でライセンスを持つ事業者です。金額は公表されていません。

LTPは、8月5日に出資したMarexに続く1週間で2社目の戦略出資者です。EquiLend・Galaxy Digital・Marexに次ぐ4社目にもあたります。いずれももともとは、同社のプラットフォーム「Tokenet」の利用パートナーでした。

Digital Prime Technologiesが運営するTokenetの利用パートナーが戦略出資者に転じた順番を示すタイムライン。1社目EquiLend、2社目Galaxy Digital、3社目Marex(8月5日発表)、4社目LTP(8月12日発表、Marexから1週間後)。いずれも金額は非公開。

Marexの出資リリースには、今回の投資がTokenetの戦略的参加者としての関係の上に築かれたものだと明記されています。出資が先にあって関係が始まったのではなく、まず使ってみたうえで持ち分を取りに行っています。

相対取引と不透明な担保で回っていた貸借を、証券レンディングの作法に載せ替える

Tokenetが持ち込んだのは、証券レンディング(株式や債券を一時的に貸し借りする仕組み)の実務です。担保管理、金利の再設定、返却請求、時価評価といった工程を、暗号資産とトークン化資産にそのまま適用しています。複数のカストディアン(資産の保管業者)と複数種類の担保をまたいで、契約のライフサイクル全体を管理できる設計です。

既存の作法をそのまま持ち込む必要があった背景を、FinanceFeedsが整理しています。多くのデジタル資産の貸し借りは、当事者同士が個別に条件を決める相対取引が中心でした。担保がどこまで透明か、業務フローが一本化されているかも、事業者ごとにばらばらでした。

いくつかの著名な破綻が、市場ストレス下でこの弱さを露呈しました。実績のある枠組みに寄せなければ規模が出ない、との判断があったとみられます。

8月9日から15日にかけては、暗号資産の被害総額が$37Mを超えました。8月9日のCoreum-XRPLブリッジの流出は、中継ソフトが入金先のアドレスをブリッジ自身のものかどうか照合していなかったことが原因です。基盤の堅さが売り物になる理由は、こうした事故が途切れないところにあります。

ただし、この基盤がどれだけ使われているかは外から見えません。利用パートナー各社の「$1B超」という数字は、貸し出せる在庫と借入の需要を指すもので、実行済みの貸借残高ではないためです。今回の出資額も公表されていません。

上半期$11.2Bの資金は規制を要する3カテゴリへ、パーミッションレスにはゼロ

資金の配り方そのものも、この週に発表された2つの集計に数字として表れています。

暗号資産VCの投資は件数が約64%減り、1件あたりは$11.1Mから$27.1Mへ

The Blockのニュースレター「The Funding」は8月11日、2026年の暗号資産VCの投資を約300件・$8.1Bと集計しました。件数は前年同期比で約64%減っています。一方で1件あたりの調達額は前年の$11.1Mから$27.1Mへ上がりました。

同じ記事で、DragonflyのRob Hadick氏は暗号資産ベンチャーが2021年の全盛期に戻ることはないと述べています。Digital Asset Capital ManagementのRichard Galvin氏は、トークン先行・プロダクト後追いのモデルはおおむね終わったと語りました。件数を絞って1件を大きくする方向へ、資金の出し手側は動いています。

CoinDeskは8月15日、NeosLegalのIrina Heaver氏による集計を報じました。2026年上半期の暗号資産関連の資金$11.2Bのうち、上位3カテゴリは決済・ステーブルコイン$3.7B、予測市場$2B、取引所・トレーディング$1.7Bです。3つとも規制当局の承認を前提とする領域で、誰の許可も要らずに参加できるパーミッションレスな案件への配分はゼロでした。

2026年上半期の暗号資産関連資金$11.2Bのうち、上位3カテゴリへの配分を示す比較図。決済・ステーブルコインが$3.7B、予測市場が$2B、取引所・トレーディングが$1.7Bで、いずれも規制当局の承認を前提とする領域。誰の許可も要らないパーミッションレスな案件への配分はゼロ。

同じ集計は「資金はもうパーミッションレスを追っていない。いま追っているのは規制されたビジネスだ」という一文で締められています。ただしこれは上半期の分布であって、この週だけの数字ではありません。

Entravel GroupとMemebookも調達、7月CPIの落ち着きとBTC ETFの流出は逆を向く

ほかにこの週は、旅行予約インフラのEntravel Group($7.5M)や、SolanaのSNSアプリMemebook($1M)も資金を調達しています。前者はホテル仕入れの決済をステーブルコインで扱う計画を持ち、伸びているカテゴリの裾野に当たります。後者は上位3カテゴリのどれにも入りません。

マクロ環境は、方向が揃っていません。7月のCPIは8月12日に発表され、コアの前年比2.5%は2021年3月以来の落ち着きでした。一方、8月10日から14日の米国スポットBTC ETFは$389.7Mの純流出となり、6週間ぶりの大きさです。

SECはトークン募集ルールの初採決を、開催前日に取り下げた

SECは8月14日の公開会合で、トークンの募集に関する初の規則制定案を採決する予定でした。枠組みは3つの柱からなります。

4年で約$5Mまでのスタートアップ向け免除、12か月で$75Mまでの調達免除、そして約束した経営努力を終えた事業が証券としての扱いを外れるためのセーフハーバーです。この議題は8月13日のSunshine Act通知(会合の議題を事前に公示する米国の制度に基づく通知)で取り下げられ、理由は示されていません。

CryptoTimesは、公式の説明が「予期しない日程上の問題」にとどまったと指摘しています。CoinDeskの報道によれば、この遅延の背景にあるのは、並行して進むCLARITY法の交渉に対するホワイトハウスの懸念です。包括的な市場構造の変更は正式な規則制定手続きで進めるべきだという、SIFMA(米証券業金融市場協会)の反対も理由に挙げられました。

そのCLARITY法も、8月8日にThune上院院内総務が動議を提出したところで止まっています。討議を打ち切って採決へ進むためのクロージャー投票は、9月半ばの上院再開後に回りました。障害として報じられているのは、Tillis・Gallego両上院議員が交渉した未公表の倫理条項で、大統領本人に暗号資産事業からの資産分離を求める内容だとされます。

もう少し広い背景もあります。The American Prospectは、民主党の予備選有権者のあいだで暗号資産への評価が下がり、業界が2024年の選挙で築いた民主党議員への影響力がゆるみ始めていると書きました。ただし倫理条項のような具体的な障害と違い、この見方だけでは、この週に採決が止まった理由そのものは説明できません。

失われたものは、実はありません。CryptoSlateは、仮に賛成の票が投じられていたとしても、それは規則制定の手続きを開くだけだったと書いています。採択・施行を経て発行体が実際に依拠できる状態になるまでには、さらに段階が残ります。既存の証券法上の免除規定は、この週も動いていません。

最初の分かれ目は、SECが取り下げた「Regulation Crypto」の議題をいつ再び公示するかです。9月半ばのクロージャー投票が可決に必要な60票に届くかどうかも、同じ時期の材料になります。

いずれにせよ、そこから条文の確定や規則の採択・施行という段階が残ります。トークンを発行する側が実際に依拠できる新しい調達経路は、当面現れない可能性が高いです。その間も、すでに規制の承認を得た取引や貸借のビジネスに資金が集まりやすい状態は続きます。

参照ページ

規制済みの取引事業への資本移動:

機関投資家向けの貸借基盤:

このほかの調達:

参考リンク

本文中で名前を挙げた発表・分析・データの出典です。

eToroのTradeZero買収と第2四半期決算:

予測市場の執行インフラ:

機関投資家向けの貸借基盤:

資金の配り方:

SECの採決取り下げとCLARITY法:

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