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Research & InsightsPublished 2026-05-19Updated 2026-05-22

Web3資金調達週次レポート: 金融・業務インフラのどこへ向かっているか

資金の流れは、実務に近い領域へ寄っている

5月11日から5月17日のWeb3資金調達を見ると、話題の中心は新しいトークンや消費者向けアプリではありません。ステーブルコイン、銀行清算、規制対応、鍵管理、AIデータ基盤など、金融機関や企業が実際に使う前提の領域が目立ちました。

資金調達ニュースを起点に、Web3・金融・規制まわりの動きも重ねると、問いは2つに絞られます。いま資金はどこに向かっているのか。次のトレンドはどこから出てきそうか。

資金の流れ1: ステーブルコインは発行から決済・清算へ

ステーブルコインの発行、銀行清算、利回り導線を業務フローとして並べた図

ステーブルコイン周辺では、資金の入り口が3つに分かれました。発行体側のネットワーク、銀行清算、利回り導線です。USDC発行体のCircleは、USDCを中心にした決済、FX、資本市場アプリを載せるL1としてArcを設計しています。SEC提出資料では、Circleが740M ARCを1トークン$0.30で販売する契約を結んだこと、ARCトークンのPresaleがa16z crypto主導だったことが開示されています。Arcの公表済み設計は、USDC建ての手数料、サブ秒ファイナリティ、Circle Payments NetworkやUSDC/EURC/USYCとの統合を前提にしています。

2つ目は銀行清算です。ステーブルコイン事業者が銀行の外で決済を作るだけでなく、銀行そのものの形で24時間決済やプログラム可能な支払いを扱う動きもあります。Augustusは、AIとステーブルコインを前提にした清算銀行としてOCCから条件付き承認を得ました。これは営業開始の承認そのものではなく、開業前条件を満たす必要がある段階です。銀行チャーター申請資料では、預金、融資、決済、トレジャリー、Stablecoin Subsidiaryを含む設計が説明されています。

3つ目は利回り導線です。BoundaryはUSBDとsUSBDを軸に、KYC/KYB済み参加者向けの検証可能なドル建て資産を打ち出しました。OseroはSky EcosystemとPlasmaが共同主導したSeedで、USDSやsUSDS周辺の貯蓄導線に寄せています。この領域で見たいのは、ステーブルコインを何として発行するかだけではありません。支払い、清算、余剰資金の置き場のどこに入り込むかが、次のトレンドを見分ける手がかりになります。

資金の流れ2: 規制対応と市場構造に資金が乗っている

コンプライアンス、取引所、清算機関、金融機関をつなぐ市場構造の図

規制・コンプライアンスでは、資金調達と市場構造の整備が同じ方向を向きました。犯罪収益移転防止、制裁対応、取引監視は、取引所だけの問題ではありません。銀行、決済会社、資本市場インフラが暗号資産を扱うときにも必要になります。

ブロックチェーン分析とデジタル資産コンプライアンスを手がけるEllipticは、One Peak主導のSeries Dで$120Mを調達しました。Nasdaq Ventures、Deutsche Bank、British Business Bankも参加しています。資金の使途は、デジタル資産のコンプライアンスと意思決定基盤の拡張です。

市場拡張側では、予測市場、先物、オプション、パーペチュアルへ広げるには、取引所側と清算側の規制基盤をそろえる必要があります。暗号資産取引所のGeminiは2025年12月にCFTCのDCM指定を受け、2026年4月にはDCOライセンスも取得しました。同じ規制接点でも、Ellipticは監視と判断の基盤、Geminiは取引と清算の市場構造という違いがあります。資金の流れとして見ると、ここは「規制が厳しいから伸びにくい領域」ではなく、「規制対応を前提に市場を広げる領域」です。

次のトレンド候補1: AIは取引・データ・ベンチマークに分かれた

AI取引、市場データ、権利処理済みデータ、ベンチマークを分けて見せる図

AI関連では、案件の中身がばらけています。チャットUIを作る話ではなく、取引戦略、市場データ、学習データ、金融ベンチマークに資金が入っています。

5月11日から5月17日の対象案件では、MoonPayによるDawn Labs買収、CharmsのPre-seed、Nof1の$15M調達、Origin Labの$8M Seedが並びました。Dawn Labsは自然言語から予測市場の取引戦略を作り、コード化、バックテスト、実行へつなげる方向です。Nof1は、AIモデルに同じルールで実資金を持たせ、Hyperliquid上で取引させるベンチマークを前面に出しています。Origin LabはWeb3色は薄いものの、ゲーム会社が保有する権利処理済みデータをAIラボ向けに供給する案件です。

同じAI枠でも、Dawn Labsは買収、Nof1は研究ラボ、Origin Labはデータ供給基盤、Charmsは消費者向けキャラクター経済です。次のトレンドとして見るなら、「AI案件かどうか」より、どの業務データ、どの市場、どの権利処理に接続しているかを見た方が分かりやすいです。

次のトレンド候補2: 鍵管理と金融OSが実装の足場になる

台帳、鍵管理、清算、権限管理がバックオフィスで接続される図

鍵管理と金融OSでは、表側のアプリより、台帳、鍵、清算、権限管理に資金の論点が寄りました。金融機関のシステムでは、誰が承認したか、どの鍵で署名したか、どの台帳に記録したか、どの条件で取引を止めるかを後から確認できる必要があります。

ウォレットインフラを提供するTurnkeyは$12.5Mの戦略的出資を受け、ウォレットと検証可能なコンピュート基盤を拡張しています。発表では、ArchetypeとCircle Venturesが投資家として加わり、暗号資産、フィンテック、AIの領域でVerifiable Cloudを展開する方針が説明されています。Turnkeyの文脈では、秘密鍵管理だけでなく、ポリシー判定、取引処理、コンプライアンス処理を検証できる実行環境で扱うことが主題です。

金融機関向けの裏側の統合は、暗号資産ネイティブ企業だけの話ではありません。Stitchは金融機関向けのクラウドネイティブな台帳・決済・カード・貸付基盤としてSeries Aを調達しました。OnrampはBitcoinのMulti-Institution CustodyとOnramp Financeを軸にSeries Aを調達しています。金融機関の導入では、見た目のアプリより、台帳、鍵、清算、権限管理のほうが置き換えにくい部分です。

今週の資金調達を並べると、次のトレンド候補は表側のサービスだけではありません。ステーブルコインを使う場所、規制に耐える市場構造、AIに接続するデータ、鍵と台帳の運用基盤に寄っています。Web3がどこで使われるかを見るなら、表側のサービス名より、この裏側の部品に資金が集まるかを追う方が分かりやすいです。

今週の参照ページ

ステーブルコインと銀行清算:

規制・コンプライアンス:

AIとデータ:

鍵管理と金融OS:

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