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Research & InsightsPublished 2026-08-30Updated 2026-08-31

【暗号資産業界週次振り返りと考察】8/24-8/30|RQD Clearing$74M・Fasset$68M、証券クリアリングとトークン化に資金集中

2026年8月24日から30日の週、開示額が最も大きかった2件の調達先は、どちらも証券の清算・保管や資産のトークン化を担う、金融機関向けのインフラ企業でした。

証券クリアリング(取引の清算・決済を代行する仕組み)のRQD ClearingはBain Capital Tech Opportunities主導で$74Mを調達しました。資産トークン化バンクのFassetもSBI Group主導で$68Mを調達し、評価額は$1Bに乗ってユニコーン入りしています。

一方で、YZi Labs(旧Binance Labs)のアクセラレーター「EASY Residency」経由の出資は上限$500Kで、対象は12社に上ります。件数ではこの週の調達ニュースの半数超を占めるものの、金額はRQD Clearing・Fassetの2件と桁が二つ以上違います。

同じ週、予測市場のKalshiでは、累計調達額が$1.12Bに拡大したことがSEC Form D開示で判明しました。ただ、ニューヨーク州司法長官の提訴とCFTCの緊急命令という連邦・州の規制対立も同時に進んでいます。BitGoはNYDIGの機関投資家向けトレーディング事業を最大$57.5Mで買収しました。カストディ・トレーディング・決済を一つに束ねる狙いです。

証券決済とトークン化バンクに$74M・$68Mが集中

RQD ClearingとFassetは、8月最終週にそれぞれ大型の調達を発表しました。

RQD ClearingがBain Capital主導で$74M調達、DTCCは24/5清算移行を6月に実施

RQD Clearingは2021年設立、ニューヨーク拠点の清算・カストディ企業です。ブローカーディーラーや投資顧問業者、米国市場にアクセスする海外金融機関向けに、コレスポンデント・クリアリング(顧客企業に代わって取引の清算・決済を担うサービス)と資産保管、取引執行をまとめて提供しています。

2026年8月27日、Bain Capital Tech Opportunities主導の戦略的グロース投資で$74Mを調達したと発表しました。

Bain Capital Tech Opportunitiesは今回新たに加わった投資家で、ABN AMRO Clearing Bank・Nyca Partners・Gentree Fund・Belvedere Strategic Capitalが既存投資家として続いています。

CoinDeskは、資産がブロックチェーン上でやり取りされた後に必要になる清算・カストディという裏方インフラの整備が、トークン化の実用化を左右すると分析しています。実際、DTCCは2026年6月に清算サイクルを24時間・週5日(24/5)へ移行しました。取引時間の拡大は既に進行中です。

既存の証券規制はブロックチェーン型システムが取引所・清算・決済を一つに統合する設計を想定しておらず、複数の法律事務所がSECに規則の明確化を求めています。

RQD Clearing自身も、調達資金の一部をデジタル資産カストディとトークン化インフラへの投資に充てるとしています。同社は2026年3月にもBlue Ocean Technologiesと、トークン化された米国証券向けの清算・決済インフラで提携していて、今回はその路線の続きです。

CEOのMichael Sanocki氏は「金融機関はフィンテック企業の技術力と、クリアリング企業が持つ市場構造への専門性を両立させるべきだ」とコメントしています。なお、米国NMS株式取引の約2.4%、オプション取引の約0.63%という市場シェアは、同社自身の発表による数字です。

SBI主導のFasset$68M、日本発RWA戦略の延長

2019年創業のFassetは、新興市場向けのステーブルコイン銀行です。USD建て口座や海外送金、RWA(現実資産をブロックチェーン上でトークン化したもの)投資までを一つの口座で扱い、自己申告では125カ国で300万超のウォレットを抱えています。

2026年8月24日、SBI Group主導のSeries Cで$68Mを調達し、評価額はユニコーンの節目である$1Bに達しました。2026年5月のSeries B($51M)からわずか3か月あまりでの追加調達で、既存投資家のSpeedinvestも参加しています。

SBIによる出資は今回が初めてではありません。SBIはSeries Bにも参加し、2026年6月には傘下のSBI RemitとFassetが国際送金インフラ構築で提携覚書を結んでいます。SBI自身もSolana上でステーブルコイン発行・RWAトークン化基盤を構築しており、今回の追加出資は、日本の規制された証券トークン化市場を推進する自社戦略の延長線上にあります。

Fassetは今回、収益が大きく伸び黒字化が続いていると発表していますが、具体的な伸び率の一次資料は確認できていません。コリドー(送金経路)についても$40B規模・100超に伸びたとしていますが、これも自社発表ベースです。

RWA・トークン化領域への資金流入はこの2件にとどまらず、同じ週にはオンチェーン型ストラクチャード商品基盤のCity Protocol(旧Cooking City)にも$11Mが入りました。Dragonfly・CMT Digital等が参加するSeed+Pre-Aラウンドです。

独立系メディアcrypto.newsの週次集計でも、近い期間の資金の大半を占めたのはインフラ・オンチェーン金融・トークン化資産カテゴリーでした。

この裏方インフラへの資金の集まりやすさが続くかどうかは、DTCCが2026年10月に予定するトークン化証券プラットフォームのフルローンチが計画通り進むか、SECのInnovation Exemption(規制の実験的な猶予制度)サンドボックスが実際に導入されるか次第です。いずれかが遅れれば勢いは弱まりますが、今のところは続く公算が大きいとみられます。

予測市場の$1.12B開示、規制対立が連邦とニューヨーク州に拡大

予測市場取引所のKalshiについて、2026年8月25日付のSEC Form D開示で、2026年4月以降の私募増資による累計調達額が$1.12Bに拡大したことが判明しました。これは新規ラウンドの成立ではなく、2026年5月にCoatue主導で成立したSeries F(評価額$22B)以降の増資進捗を、規制当局への提出書類が事後的に明らかにした形です。

この開示の2日前の2026年7月31日にはニューヨーク州司法長官がKalshiを提訴し、8月11日にはCFTCが緊急権限を発動しており、連邦と州の規制対立が同時進行しています。ニューヨーク州は2026年7月31日、Kalshiが州の賭博免許なしにスポーツ関連の予測市場を提供しているとして提訴しました。CFTCは同年8月11日、緊急権限を発動してニューヨーク州内での通常営業の継続を指示しています。

対立の根本には、巡回裁判所間で判断が割れているという法的な不確実性があります。連邦控訴審の合議体はKalshiのスポーツ関連イベント契約を連邦専属管轄のスワップと認めた一方、ユタ州地裁のShelby判事は商品取引所法がユタ州の賭博規制を専占しないと判断しました。この管轄の空白を避けるため、CFTCが緊急命令という異例の手段を取ったとみられます。

Kalshiを巡る規制対立の構図。ニューヨーク州司法長官が州の賭博免許なしとして提訴し、CFTCが緊急命令で通常営業の継続を指示。連邦控訴審の合議体はスポーツ関連契約を連邦専属管轄のスワップと認定した一方、ユタ州地裁のShelby判事は州の賭博規制が専占されないと判断しており、連邦・州・裁判所間で立場が割れていることを示す比較図。

評価額は2025年初めの約$5Bから2026年5月には$22Bまで急上昇しています。年換算約$2Bの収益と米国予測市場シェア90%超という数字が、Kalshiを消費者向けフィンテックではなく取引所インフラとして評価する論理を裏付けているとInvesting.comは分析しています。

Hyperliquidの予測市場参入や、TipRanksが伝えるBernsteinの推計による予測市場全体で$240B規模・前年比+370%という成長予測は、Kalshiが評価額引き上げを急ぐ競争上の動機になり得ます。ただしThe Defiantは独自の集計で、2026年8月の予測市場全体への関心はペースダウンしていたと報じています。単純な右肩上がりとは言えません。

需要側の裏付けとしては、2026年サッカーワールドカップ期間中の取引急増があります。Kalshiの月間取引高は2026年6月に$31Bに達し、前月比7割超伸びました。もっとも、取引高の最大9割はスポーツ関連のイベント契約に集中しているとFinanceFeedsは指摘しています。同種の提訴・提訴検討は10州超に及ぶという報道もあります。

この規制対立が今後どう転ぶかは、連邦控訴審とユタ州地裁の判断の割れがいつ統一されるか、そして10州超に広がる同種の提訴・提訴検討がどこまで積み上がるかにかかっています。Hyperliquidの参入とBernsteinの強気な成長予測、The Defiantが指摘するペースダウンのどちらに近づくのかも、あわせて見ておきたいところです。

BitGoのNYDIG買収、カストディ・トレーディング・決済を一つに

デジタル資産インフラのBitGoは2026年8月27日、NYDIGの機関投資家向けトレーディング事業を買収したと発表しました。買収額は基本対価$42.5M(現金$7M+BitGo株式約$35.5M)に業績連動のアーンアウト(業績目標達成に応じた追加支払い)最大$15Mを加え、総額最大$57.5Mです。約30名の従業員と約250件の機関投資家との取引関係がBitGoに移ります。

BitGoによるNYDIG機関投資家向けトレーディング事業買収の対価構成を示す計算図。現金$7MとBitGo株式約$35.5Mを合わせた基本対価$42.5Mに、業績連動アーンアウト最大$15Mを加えて、総額最大$57.5Mになることを示す。

カストディ専業・トレーディング専業という単機能サービスから、BitGoは機関投資家向けの統合スタックへと事業を拡張する動きを見せました。ただしCryptoSlateは、この買収を業界全体の統合ではなく、各社が専門特化を選ぶ分岐の一例と位置づけており、見方は分かれています。

BitGo CEOのMike Belshe氏は「機関投資家は、カストディから取引・ファイナンシング・決済までを一貫して支えられるパートナーを求めている」と述べています。

一方のNYDIGは、トレーディング事業の売却によって電力・ビットコインマイニング・HPC(高性能計算)データセンター事業に経営資源を集中させます。ビットコインマイニング企業が電力インフラをAI向けホスティングへ転用する動きは業界全体に広がっていて、VanEckの分析によれば、電力1メガワットあたりの収益はマイニングよりAIホスティングの方が高いといいます。

NYDIGは今回の売却を「経営資源集中」と自ら説明しています。買う側のBitGoは、2026年のNYSE上場後、AI関連の人員削減が業界全体に広がる流れの中で自社も15%の人員削減に踏み切っています。株式込みの今回の買収はその数ヶ月後の動きで、単純な強さのシグナルとしてだけ読むには留保が必要です。

他の暗号資産インフラ企業が同様の統合買収に動くかどうか、そしてBitGoが数ヶ月前に断行した15%の人員削減とのバランスが今後どう評価されるかが、この集約の流れを測る手がかりになります。

$500K上限の一括出資が調達件数の半数超を占める

対象となったのは、EASY Residency第4期に参加したプロジェクトのうち、自ら出資を公表した少なくとも12社です。

YZi Labsの$500K上限SAFE、12社への一斉出資

YZi Labs(旧Binance Labs)が運営するアクセラレーター「EASY Residency」第4期は、2026年8月26日にブータンのGelephu Mindfulness City(新設経済特区)でデモデイを開催しました。

このデモデイの前後には、YZi Labsから出資を受けたという発表が少なくとも12社から相次ぎました。顔ぶれはAlloco・De1・ElfomoFi・Facto・FinTax・Kravata・Liquorice・Nara・Neutral Trade・Primus Labs・SmartX・XHuntです。

この出資は、$150Kの株式SAFE(将来の資金調達時に株式に転換される権利証書、5%相当)に$350Kの無上限SAFEを加えた、最大$500Kの標準化された枠組みによるものです。YZi Labs自身は、約1年の開発期間を確保しつつ$1B規模の追加出資枠(follow-on)で有望プロジェクトを自社エコシステムに留めるための、意図的なポートフォリオ設計だと説明しています。

2026年の暗号資産VC市場は大型の後期ラウンドへ偏っていて、シード・プレシード段階への資金配分は調達総額のわずか5.2%まで縮小しています。こうしたアクセラレーター型のバッチ投資が、単独でシードラウンドを組みにくい早期プロジェクトの受け皿になっているのでしょう。

開催地にブータンを選んだ背景にも、Gelephu Mindfulness Cityのファストトラック・ライセンシングと、ブータン政府自身が最大1万BTCを開発資金として投じる方針があります。

この出資枠の上限$500Kは、同じ週開示のRQD Clearing($74M)・Fasset($68M)とは二桁以上の開きがあります。この週の調達関連ニュース22件のうち12件がこのバッチに該当し、件数では半分以上を占めながら、金額で見れば全体のごく一部にすぎません。

この週の調達関連ニュース22件のうち12件を占めるYZi LabsのEASY Residencyバッチ出資(1社上限$500K)と、同じ週の大型調達であるRQD Clearing($74M)・Fasset($68M)を対比し、件数シェアでは過半でも金額では二桁以上の開きがあることを示す比較図。

X上では、Binanceエコシステムとの親和性が選定に影響しているのではないか、社数が多く個別支援が行き届きにくいのではないか、といった投稿も見られます。ただし名指しのメディア報道ではなく、あくまでコミュニティの一部の声です。

TermMax、YZi Labsが指摘する金融アプリケーション層の空白

固定金利のオンチェーン貸借マーケットプレイスTermMax(開発元Term Structure Labs)も、YZi Labsから戦略出資を受けたと発表しました。金額は非公開です。

これはEASY Residency第4期ではなく、前身の第3期からの関係を土台にした出資です。$TMXトークンのTGE(トークン発行イベント)翌日にあたる2026年8月26日に発表され、累計調達額は$8M超に達しています。

YZi Labsは出資理由として、トークン化された優良株などの取引量が伸びる一方、それを支える与信・担保管理・リスク移転といった金融アプリケーション層の整備が追いついていない点を挙げています。これはYZi Labs自身の説明ですが、独立系のDeFi市場分析も、オンチェーンの固定金利商品を機関投資家向けに成熟しつつあるカテゴリーとして扱っており、方向性は一致します。

TermMaxはEASY Residency第4期の24社には含まれず、バッチの一括出資とは別枠の戦略出資である点には注意が必要です。次期EASY Residencyのバッチ規模が今回の24プロジェクトから増減するか、そしてシード段階への資金配分シェア5.2%が今後の四半期でどう推移するかが、この構図の持続性を占います。

参照ページ

証券決済とトークン化バンク:

Kalshiの規制対立:

BitGoのNYDIG買収:

YZi Labsの一括出資とTermMax:

参考リンク

本文中で名前を挙げた発表・分析・データの出典です。

RQD ClearingとFasset:

Kalshiの規制対立:

BitGoのNYDIG買収:

YZi Labsの一括出資とTermMax:

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