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Research & InsightsPublished 2026-09-14Updated 2026-09-16

【暗号資産業界週次振り返りと考察】9/7-9/13|UniswapはPonsを取得、Paywardは複数取引所との提携に$100Mを追加

9月7日から13日の週に目立った企業の判断は二つあり、どちらも自前で競い続けたり一から作ったりせず、資本でつながる相手を選びました。Uniswap Labsは自社ローンチパッドPools.tradeでの競争をやめ、Robinhood Chain上で流動性を集めているPonsのトークンを取得しています。

同じ週、Kraken親会社のPaywardはNasdaq Venturesから$100Mの追加出資を受け入れました。評価額は$21Bとされています。Uniswapは出す側、Paywardは受け取る側と資本の向きは逆ですが、自前だけで進めるやり方を選ばなかった点は同じです。

このほか、地方銀行7行が共同で、トークン化預金の共有インフラCari Networkに$32.5Mを出資しました。ブロックチェーン分析のTRM Labsは、半年で評価額を倍にしています。資本流出が続くWeb3ゲームでも、AR位置情報ゲームのRealGoが$6Mを集めたと発表されています。

UniswapはPonsのトークンを取得、Paywardは複数取引所との提携を選んだ

この週、Uniswap Labsは自社ローンチパッドでの競争をやめてPonsに出資し、Paywardは$100Mの追加出資を受け入れました。

流動性の過半はPons経由、Uniswapは競争をやめて資本参加に切り替えた

Ponsは、Robinhood Chain上でコードを書かずにトークンを発行し、そのまま売買まで行えるローンチパッドです。

Uniswap Labs Venturesが2026年9月3日、このPonsのトークンを取得したと発表しました。購入量・価格・時期はいずれも非公開で、The Defiantはこの非開示そのものを記事にしています。

この取得の4週間前、Uniswap Labs自身が同じRobinhood Chain上に競合ローンチパッド「Pools.trade」を立ち上げていました。ところが取得を発表した頃には、Ponsの日次手数料が$5.95Mに達する一方、Pools.tradeは$38Kにとどまっていました。

Uniswap LabsがRobinhood Chain上で自社ローンチパッドPools.trade(日次手数料$38K)を運営していたが、同チェーンでシェアを持つPons(日次手数料$5.95M)のトークンを取得し、競争から資本参加へ切り替えたことを示す比較図

Robinhood ChainはUniswap v4のクロスチェーン取引高の56.3%を占めています。Uniswap Labsは、自社ローンチパッドで競い続けるより、その流動性を実際に生んでいるプロトコルに資本を入れる方を選びました。

Paywardは取引所ごとに提携を重ねる、Nasdaqの$100Mはその一つ

Paywardは、暗号資産取引所Krakenの親会社です。Nasdaq Venturesから$100Mの戦略出資を受け、評価額は$21Bとされました。

今回の出資は、2026年3月に始まったトークン化株式をめぐる提携を広げるものです。Nasdaqの市場サーベイランス(監視)技術も、Paywardの取引プラットフォーム全体に導入されます。

Payward共同CEOのArjun Sethi氏は「業界は統合が進んでいる」としたうえで、「我々はそこで最速に複利成長できるようこの会社を作った」と語っています。

実際、PaywardはNinjaTrader($1.5B)・Bitnomial($550M)・Reap($600M)などの買収を重ねてきました。開示済みの買収額だけで、合計は約$2.75Bに達します。

提携先もNasdaqにとどまらず、Deutsche Börse($200M出資済み)やLSEGとそれぞれ個別に組んでいます。

Paywardを中心に、Nasdaq VenturesとDeutsche Börseからの出資($100M・$200M)を受け取る一方、NinjaTrader・Bitnomial・Reapを買収(合計約$2.75B)し、LSEGとも提携しているという資本の流れを示す図

Yahoo Financeによれば、自社IPOは2027年Q2以降に先送りされたままです。

なお$21Bという評価額について、The BlockもCoinDeskも、Bloombergが匿名筋から得た数字という扱いにとどめて報じています。ABC Moneyは、評価額が10か月で3割超も動いてきた経緯を挙げ、確定した事実として扱うべきではないと指摘しています。$100Mの出資そのものは、複数のメディアがそれぞれ独立に確認した事実です。

CryptoSlateは、トークン化証券が連邦法上どう分類されるかは、SECのパイロット枠組みの外ではまだ決まっていないと指摘しています。

ただ、この週の資本がすべて既存勢力との提携に向かったわけではありません。無期限先物(満期のない先物契約)を扱う分散型取引所「perp DEX」には、VC資金なしで最大手になったHyperliquidをきっかけに資金が入っています。同じ週には、新興のAntarctic Exchangeも$7Mを調達しました。

The Blockは、このHyperliquidの実例がperp DEX全体への資金流入を後押ししていると分析しています。既存勢力との提携と挑戦者への賭けが、この週は並んで起きていました。

業界再編が続くうちは、すでに強い相手と出資や提携で組む動きが、他のプロトコルにも広がっておかしくありません。ただ、perp DEXのように挑戦者へVC資金が入る流れも同時に続いているので、二極化のまま進む可能性も残ります。

トークン化証券の法的分類がパイロット枠組みの外でも明確になれば、Paywardのような提携の広げ方が業界の標準に近づきそうです。2027年Q2に予定されるNET(Nasdaq Equity Tokens)稼働の時点で、この提携が実際に動いているかが判断材料になります。Pons経由の取引がRobinhood Chain上でシェアを保てるかどうかも、あわせて見ておきたいところです。

地方銀行7行、$32.5Mでトークン化預金の共有インフラCari Networkを設立

地方銀行7行はステーブルコインに対抗する共有インフラに出資し、決済インフラのLatitudeは営業より先に規制対応を済ませました。

地方銀行7行がCari Networkに$32.5M、決め手はステーブルコインにないFDIC保険の適用

First Horizon、Huntington、KeyBankなど地方銀行7行がCari Networkに$32.5Mを出資しました。出資者に銀行以外はいません。

Cari Networkは、銀行預金をブロックチェーン上のトークンにして、銀行同士や銀行と顧客の間で即時に動かせるようにする共有インフラです。創業者兼CEOのGene Ludwig氏は、米通貨監督庁(OCC)の長官を務めた人物です。

2025年に成立した米国のステーブルコイン規制法GENIUS Actは、ステーブルコイン(特定の通貨に価格を連動させた暗号資産)の準備金を連邦預金保険の対象外と定めています。一方でトークン化預金は、法的にはあくまで預金です。

このためトークン化預金は、FDIC(連邦預金保険公社)の保険が付く対象になり得ます。単独では規模を出しにくい地方銀行が連合を組んでステーブルコインに対抗する動機は、この違いにあります。

GENIUS Act下でステーブルコイン準備金は連邦預金保険の対象外である一方、トークン化預金は法的に預金でありFDIC付保の対象になり得るという非対称性が、地方銀行7行によるCari Network設立の動機になっていることを示す比較図

JPMorganなどの大手行はすでに自前のトークン化預金を持っています。この共有インフラは、主に中堅・地方銀行のための対抗策です。

ただし、複数の銀行が共同で運営するコンソーシアム型のインフラは、過去の実績が「まちまち」だという指摘もあります。

Latitudeはライセンス取得を先に済ませ、Oak HC/FTが主導する出資を受けた

ステーブルコイン決済インフラのLatitudeは、企業が送ったステーブルコインを現地通貨に変え、受取人まで届ける「最後の区間」を担っています。

Oak HC/FT主導のSeries Aで$35Mを調達し、累計調達額は$43Mに達しました。

Latitudeは創業1年目を、事業拡大ではなく規制対応に充てました。本格営業を始める前に、米国45州で送金業ライセンス・登録・ノーアクションレターを確保しています。リード投資家Oak HC/FTのパートナーOivind Lorentzen氏はFortuneに対し、大手企業は規制を受けた相手と組みたがっていると語りました。

「最後の区間」を技術的に担えること自体は、Latitudeの事業が成り立つための前提です。ただ、それだけでは他社と差がつかないので、出資の決め手としては二の次でした。

Cari Networkが預金保険の対象になり得るという制度上の違いを動機にしたのに対し、Latitudeはライセンスを先に取るという実務を優先しました。同じ規制対応でも、中身は別物です。

同じ週、ステーブルコイン発行体のTetherはコロンビアのフィンテック企業Plentiに出資しました。銀行連合がステーブルコインに対抗する共有インフラを作る一方で、Tetherは中南米の消費者向けプラットフォームに少数株主として出資しています。Tetherにとって同種の出資は、今年に入って少なくとも4件目になります。

FDICは年内にステーブルコイン規則を最終化する見通しです。規制の方向性を先取りしてきた銀行連合や決済インフラ企業に資本が集まる流れは、さらに強まる公算が大きいでしょう。

AIが犯罪検知とエージェント決済の両方で使われ始め、TRM Labsの評価額は半年で倍増

この週、TRM LabsはSeries Cの増資で評価額を倍増させ、AgentumはAIエージェント向け決済レイヤーで$7Mを調達しました。

AIで犯罪が巧妙になり、検知ツールの需要が評価額を押し上げた

ブロックチェーン分析のTRM Labsは、Series Cの増資で評価額を$2Bに引き上げました。2026年2月の前回ラウンド($1B)からわずか半年での倍増です。同社は75カ国600超の政府機関・金融機関を顧客に持ち、暗号資産が絡む金融犯罪や詐欺を検知しています。創業当初から、複数チェーンへの対応をChainalysisなど競合より早く進めてきた点が、技術面での強みです。

TRM Labs独自の指標では、犯罪へのAI活用が増えているといいます。AIが実行にかかる時間や専門知識の壁を取り払い、詐欺がより巧妙で大規模になったためです。これを検知するAIネイティブなツールへの需要が、ARR(年間経常収益)を過去3年で4倍に押し上げました。

TRM Labsの公式発表は、既存投資家のBlockchain Capitalをリードと明記しています。一方Fortuneはリード投資家名を確認できず、CEOのCastaño氏が調達額を「控えめ」としか説明しなかったと報じました。また、評価額の公表はAI人材採用への「合図」だという同氏の説明も伝えています。

なお競合のChainalysisは同時期、ICEとの$94.6M契約を巡ってTRM Labsを提訴しています。この訴訟と増資の間に確認できる因果関係はなく、時期が近いだけの別件です。

ほかに、AIエージェント同士が人を介さず取引するための決済・信頼レイヤーにも資金が入っています。BNB Chain上でこのAIエージェント向けレイヤーを構築しているAgentumは、8投資家から$7Mを調達しました。

エージェント識別規格ERC-8004の登録数は、BNB Chain上だけで20万件を超えました。決済規格x402の採用も同時に広がっています。AIモデルを資産として取引するマーケットプレイスのCubedも、この週にTaisu Venturesから資金を調達しました(金額非公開)。ただし両社とも、情報源は公式発表とアグリゲーターの転載が中心です。

AIが絡む犯罪が増え続ける限り、TRM Labsのようなコンプライアンス企業の評価はまだ上がる余地を残しています。一方でAgentumやCubedのような小口の案件は、実績を数字で確かめられるようになるかどうかがこの先の分かれ目です。

Web3ゲームは93%が実質消滅、資本はAI・RWAへ流れる

Web3ゲームは、製品開発が長引く一方で、トークンには発行した時点で値が付きます。この構造的なずれを、業界はずっと抱えてきました。

投資会社Caladanの分析では、ゲーム分野へのVC資金配分は2022年の62.5%から、2025年には一桁台まで縮小しました。2026年時点でプロジェクトの93%が実質的に閉鎖されるか無価値になっています。新しく入るプレイヤーの資金を既存プレイヤーへの報酬に回す設計だったため、流入が止まると連鎖的に崩れました。

大手投資家のAnimoca Brandsも、ステーブルコイン・RWA(現実資産のトークン化)・AIへ資本配分を移しています。それでも、AR位置情報ゲームのRealGoはGreenwood Global Capitalなど3社からStrategicラウンドで$6Mを集めました。

調達した資金は、プロダクト開発・チーム拡大・AI関連の研究に充てるとしています。RealGoについては、2026年4月にもAnimoca Brandsなどから$3.5Mを調達したという報道があります。ただし、その投資家陣も金額も今回の$6Mとは一致せず、単一の報道以外に確認できる情報源がないため、この数字は留保付きで見ておくべきです。

ゲーム以外でも、この週は小規模な買収が一つありました。Web3データインフラのBilinear LabsはSei Labsに買収され、9月14日に事業を終了します。

Web3ゲームへの資本配分の縮小は構造的な要因によるもので、簡単には反転しないと見るのが妥当です。実際に使われていることを数字で示せるプロジェクトだけが、例外として資本を集める状態が続きそうです。

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