DeFi(分散型金融)の流動性・トレーディングエンジンを手がける Liquorice が、YZi Labs(旧Binance Labs)から資金調達。金額は非公開です。YZi Labsが運営するグローバル・アクセラレータープログラム「EASY Residency」シーズン4の参加24社の1社として発表されたとのことです。発表は2026年8月27日でした。
プロジェクト概要
Liquorice は、片側のみが資産を預け入れる形式の貸出プール(one-sided lending pool)と、MEV(Miner/Maximal Extractable Value、取引の順序を操作して得る不正な追加利益)が発生しない設計のトレーディングエンジンを組み合わせた DeFi プロトコルです。狙いは、利用者が希望する取引条件だけを示し、実際の執行方法はソルバー(solver)と呼ばれる第三者に委ねる「インテントベース取引」において、必要な流動性を円滑に供給することです。
DeFi では、Private Market Maker(PMM、機関投資家向けの非公開型マーケットメーカー)が複数の取引所やプロトコルにまたがって注文をさばこうとすると、それぞれの拠点にあらかじめ担保となる資産(在庫)を分散して置いておく必要があり、資金効率が悪化しがちです。Liquorice はこの課題に対し、資産ごとに用意した貸出プールから PMM が必要なタイミングで資金を借り入れられる仕組みを提供し、事前に資金を各所へ分散配置しておく必要をなくすとしています。
Liquorice は 1inch、Uniswap X、CoW Swap といった主要なアグリゲーター(複数の取引経路を比較し最良の条件で注文を執行するサービス)と統合しており、PMM 側は個別に接続作業をしなくても、これらのアグリゲーター経由で Liquorice の流動性にアクセスできます。オフチェーン(ブロックチェーンの外)で稼働する専用エンジンが、接続する複数のマーケットメーカーから提示された見積もりの中から最良のものを選び出す仕組みで、利用者はガス代(取引手数料)を負担せずに効率よく取引を成立させられるとしています。
YZi Labs「EASY Residency」シーズン4という文脈
アグリゲーターサイトと Telegram のディール情報だけを見ると、Liquorice への出資は投資家名以外の詳細が分からない単発の資金調達に見えます。しかし YZi Labs(旧 Binance Labs)公式Xの発信を確認すると、より具体的な背景が見えてきます。
YZi Labs はグローバルなアクセラレータープログラム「EASY Residency」を運営しており、今回はそのシーズン4にあたります。2026年5月22日に募集を開始し、オンライン5週間とブータンの新興都市 Gelephu Mindfulness City での現地滞在5週間を合わせた計10週間のプログラムを経て、8月26日に現地で Demo Day を開催しました。CryptoBriefing や Cryptopolitan など複数の暗号資産メディアが募集開始時点で報じたとおり、参加チームには YZi Labs の10億ドル規模の Builder Fund から最大 $500K の出資枠が用意されていました。
YZi Labs 公式Xは Demo Day を前に、シーズン4を卒業した24社のポートフォリオを一括で公開しました。この投稿によれば、参加24社はいずれも $500K の出資を受けており、シーズン全体でのデプロイ額は $12M に達したとのことです。Liquorice はこの24社の1社として、貸出プールと MEV フリー取引エンジンを組み合わせたインテント/RFQ(Request for Quote、見積り要求方式)マーケットメイキングの資金効率化に取り組むプロジェクトとして紹介されています。
8月27日に crypto_fundraising の Telegram チャンネルで同時多発的に配信された調達ニュースのうち、Nara、FinTax、De¹、ElfomoFi、Alloco、Neutral Trade、Primus、SmartX、XHunt など複数の案件が同じ「YZi Labs (ex Binance Labs)」という投資家表記を共有しているのも、個別交渉の結果というより、このシーズン4コホート卒業に伴うポートフォリオ一括発表である可能性が高いとみられます。
Liquorice にとって、今回が初めての外部調達ではありません。アグリゲーターサイトの記録によると、2024年7月には Greenfield Capital 主導のプレシードラウンドで $1.2M を調達しており、Polymorphic Capital、L2 Iterative Ventures、1inch、HASH CIB、Efficient Frontier、Follow[the]Seed、Horadrim.Capital が参加していました。今回の YZi Labs からの出資は、このプレシードに続く追加の後押しという位置づけです。
Liquorice 公式Xの Demo Day 報告によると、同社はアルファ版で累計 $60M 超を決済し、プール資金を220回超再利用、Ethereum 上でソルバー6社が接続、マーケットメーカー4社とは基本合意書(LOI)を締結済みとしています。ただしこれらの数値はいずれも自己申告であり、第三者による検証は確認できていません。
参考リンク
https://crypto-fundraising.info/projects/liquorice/ https://t.me/crypto_fundraising/5343 https://x.com/i/status/2092220721972101586 https://x.com/LiquoriceHQ/status/2092589604738347450 https://cryptobriefing.com/bnb-chain-easy-residency-season-4/ https://www.cryptopolitan.com/yzi-labs-season-4-cohort-to-bhutan/