AI向けウェブデータ収集ネットワーク(DePIN、利用者が自分の機器や回線を提供して報酬を得る仕組み)の Grass が、Multicoin Capital から資金調達。調達額は非公開です。Multicoin は2026年9月29日に、自社のヘッジファンドとベンチャーファンドの両方から出資したと発表しました。
プロジェクト概要
Grass は、個人が使っていないインターネット回線の帯域を提供し、その回線経由で公開ウェブのデータを集めるネットワークです。Multicoin の説明では、600万人を超える貢献者が、収益から支払われるドル建ての報酬を受け取っています。
顧客はフロンティア AI ラボ(最先端の AI モデルを開発する企業)です。Multicoin のメモによると、家庭の回線を経由することで、アクセス回数の制限(レート制限)や地域ごとに異なるページ内容、ブラウザでの描画が必要なページにも対応しやすくなります。Grass はこの仕組みで、AI の学習用データを大規模に集めてきました。
出資者である Multicoin のメモによると、Grass の収益は2025年が $17M、2026年上期が $17M で、2026年通期は学習データだけで $75M を見込んでいます。いずれも Grass の自己申告の数字です。
学習データから推論時のウェブ取得へ
Multicoin によると、市場は Grass を AI の学習データを供給する会社と見ていますが、まだ織り込まれていない市場があります。AI が回答を作る途中や、エージェント(利用者に代わって作業する AI)が行動する前に、最新のウェブページを取りに行く「推論時の取得」です。学習データは一度モデルを作れば需要が落ち着きますが、推論時の取得は AI が使われるたびに発生します。Multicoin は、後者の市場は学習データの市場より桁違いに大きくなりうると説明しています。
そのための製品として Multicoin が挙げているのが、提案中の Contents API です。実現すれば、AI モデルが家庭回線のネットワーク経由で公開ページを開き、内容を取得できます。どのページを見に行くべきかを選ぶ Search API とウェブインデックス(検索のためのページ一覧)も計画中です。ウェブインデックスはこれまで Google や Microsoft のような大企業が作ってきました。Multicoin は、Grass が既存の顧客関係と回線の調達コストの面で優位にあるとしています。
出資の形(トークンか株式か)は、確認できた範囲で明示されていません。ラウンド名や評価額、資金の使途も公表されていません。Startup Fortune によると、Grass は2023年に Polychain と Tribe 主導で $3.5M のシードを調達しています。
Startup Fortune は、Contents API と Search API が今後2四半期のうちに AI ラボとの実契約につながるかどうかが成否を分けると指摘しています。